安定を図る

好きなものについての考察

推しが有名になるということ

 推しが有名になろうとしている。もとより、彼はこの界隈ではそこそこ名の知れた、にわかでも名前ぐらいは知っているほどの認知度だ。
 有名になってくれることは応援しているこちらの身としては大変喜ばしいことである。だが私はこの事実を素直に喜ぶことが出来ない。というよりは、うまく受け止めることが出来ないと言った方が正しい気がする。

 事の発端は彼が次に出演すると噂されている舞台だ。原作は超人気、チケ取りは毎回戦争。そんな舞台に、彼は出演するという。


 数あるキャストの中で、なぜ彼なのか?私はそこが疑問で仕方がない。今まで彼のことを消しカス程度にしか思っていなかった原作ファンが、「◯◯役の◯◯さんはこんな人です!」とまるでその役が決定したかのようにSNSで拡散している。私はそれが許せない。しかもそういった人に限って突然SNSのユーザーネームの尾末に「@◯◯沼に落ちた。」などとその俳優の名前を入れる。エゴサーチをする人間からしたら検索でその人の投稿が必ず全て引っかかって大変迷惑である。見たくもない原作キャラファンの投稿を嫌でも見せられる気分はお世辞にも良いとは言えない。

 話を戻そう。もしも本当に出演するのならば、私は精一杯応援しようと思う。だがあいにく私はこのシリーズの舞台が前から嫌いだった。全くもって良いイメージがないからだ。だから推しにだけは出てほしくなかった。しかし、この舞台は彼が前からずっと出たい出たいと言っていた作品なのだ。彼が望んだ仕事ならば私は応援したい。彼にはいつでも、誰の前に立っても恥じないような俳優であってほしい。

 ちなみに二推しもこのシリーズの舞台には出演していたのだが、前公演きりでその役目は終了だったし、そこまで人気のあるキャラクターではなかった(彼の人気の度量もあるが)。もちろんその公演期間内は彼の姿を見るのが辛かった。それでも楽しそうにその役を全うし、120点じゃ足りないぐらいの笑顔でオフショットに映る彼を見たら応援せざるを得なかった。彼が頑張っている姿が、私は好きだからだ。

 

 

私の中で、有名になることの何がいけないのか?
 
 こんな自問自答は結果的に自分の精神を苦しめるだけなのだが、戒めの意味も込めてあえて書こう。

 私は頑張っている人が好きだ。向上心にあふれ、少しでも私たち見ている人に良いものを披露できるよう本人なりに試行錯誤し、信念を貫けるような人を応援したくなる。
 以前私は、J事務所の某グループを長きに渡り応援していたと書いた(削除済み)。ざっと5年半ほどだろうか。幼心に突然現れた、当時の私にとってはまさしく「王子様」だった。
 そんな彼らはここ数年で急成長を遂げている。ファンクラブの会員数も20万を悠に越すほどの人気グループとなった。私の会員番号は3万番台だった。
今の彼らには確実な人気と、ついてきてくれるファンがいる。問題はファンの方にあった。
 私が応援していた時代のファン層は、20代の女性からが多い気がした。だが、テレビに映る回数が増え、広い層に認知される。増えたのは10代のファンだった。
 10代のファンは空気が読めない。静まらなければいけない場面で全く静まらず、「◯◯ーー!!」とメンバーの名前を叫ぶ、会場近くのホテルに泊まり、窓にうちわやタオルなどを貼り付ける、会場を出るときは我先にと言わんばかりに押し合いが当たり前 など。
 ここまで偉そうに書いてきた自分も10代なのだが、好きになったのは小学生の頃だったのでマナーは現場で嫌というほど学んだ。
 以前は他担から「◯◯のファンはマナーのいい人たちばかりだ」と言われていた。だが今はどうだろうか。言うなれば、「常識がないのが常識」という感じだろう。また、ファンが増えたことで彼ら自身が変わってしまったことも事実だった。この頃の彼らには一生懸命さがいまいち感じられない。さらに、若干態度が横柄になってきた部分もみられるようになった。
 言葉は厳しいかもしれないが、これは私が応援したかったアイドルではないと思った。だから私は見切りをつけて、他の界隈も見てからこちらへ渡ってきたという訳だ。

 

 長々と私情を綴ってしまったが、こういう経緯があって私は彼らに「裏切られた」と感じた。彼らをそのようにしてしまったのは他でもないファンである私たちなのだが、いつも「ついてこいよ!」「浮気すんなよ!」などと言いつつ、ファンとの距離を段々と広げていったのは間違いなく彼らだった。
 私はこのような経験を2度した。最初は上記のアイドル、2度目はネットシンガーだ。ネットシンガーには、SNSで「人気が出るのは嬉しいけどだんだん遠くなっていく気がする」とリプライを送ったところ、「自分らしく一生懸命、楽しんでもらえるように頑張ってるから、みんなにも変わらずについてきてほしいな!」と返された挙句、人気にかまけてアパレル業を始められた。私はシンガーとしての彼が好きだったから、これも立派な裏切り行為だと思った。


 あくまでこれは私の経験談であって、誰でもこうなるわけではない。ただ、少なくとも私は前述のことで傷ついた。私が豆腐メンタルなのがいけないのかもしれない。
 私の推しはこうなるとは限らないが、ならないとも言いきれない。裏切られる基準だって人それぞれだし、裏切られ方も様々だ。


 だからこそ、今の推しには裏切られたくないという気持ちがより強い。誰よりも大好きだから、誰よりも輝いていてほしい。


 それでも、有名になってほしくないと思ってしまうのはわがままなんだろうなぁ。